沼津市の海を味わう水産ガイド | 富士のふもとの海と底

港の原点、釣る誇り。

漁師の勘と技が生む、輝きの一本
美しくも美味しい「タチウオ」が、漁師の矜持

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沼津我入道漁業協同組合

静岡県沼津市我入道林町478

沼津港の南、狩野川の河口部左岸に位置する「沼津我入道漁協(ぬまづがにゅうどうぎょきょう)」。漁師の技量がものをいう「一本釣り漁」が盛んです。主な取り扱い魚種はタチウオやムツ、イカなど。我入道地区は古くから優良な漁場であるとともに、水運の拠点としても栄えたため、ノスタルジックな漁村の雰囲気を色濃く残しています。
一本釣り漁によって丁寧に釣り上げられた魚は傷が付きにくく、身質がよいのが特徴です。見た目も優れており、タチウオは文字どおり研ぎ澄まされた太刀のような美しさのまま出荷されていきます。一本釣りならではの高品質な漁獲物を求めて我入道を訪れる料理人もいるそう。また、近年は遊漁の需要も高まっているといいます。
今回お話を伺ったのは漁師として働きつつ、遊漁船業にも従事するお二人。勘七丸の船長を務める芹沢潤二さんと、鈴竹丸船長の鈴木基彦さんです。我入道の今昔をつぶさに見つめ続けた両者の視点から、地域や漁獲物の魅力を紐解きました。

お話をお聞きした、鈴竹丸の鈴木さん(左)と勘七丸の芹沢さん(右)

時代ごとに変遷を遂げた
我入道の歩み

かつて我入道では、棒受網を用いたサバ漁が盛んに行われていた。だが、より効率的な漁法が登場すると棒受網漁は次第に衰退し、代わってタチウオの一本釣り漁が主流となっていった。夜行性であるタチウオは、日中は深場に潜むため、漁は夕方から夜にかけて行われるのが常だ。沼津地区では、以前から夜間操業が認められており、この地域特有の漁法として根付いている。
最盛期には場所取りの船が昼間から列を成したと語る芹沢さん。「2000年頃には夜になると千本浜の端から端まで明かりが並んでね。それはもう見事な光景だったよ」と当時を懐かしむ。そうした状況で揉まれながら、一本釣りの技術に磨きを掛けたのだとか。
全国的に漁獲量が減少するなか、現在芹沢さんは遊漁船業に重きを置いている。鈴木さんやほかの漁師たちについても同様で、漁のみを生業とする人の数は減少の一途を辿っているそうだ。しかし、遊漁で海へ出る際にも漁師として培った経験は欠かせない。訪れた客が楽しめるよう心を砕き、よく釣れるポイントへ案内する。我入道の人たちは時代に即したかたちを模索しつつ、海と向き合い続けている。

美しさと美味しさを兼備した漁獲物

タチウオの一本釣り漁は餌を付けた8本の針を海へ投下して、これを巻き上げる作業を繰り返しながら行う。釣り糸を手繰り寄せる繊細な動作や、状況によって船の位置を微調整するなどの臨機応変な対応が求められることから、漁場がよいからといって釣果が上がるわけではない。手間暇かかる作業だが、一本釣り漁は量より質の漁法とのこと。一本一本傷が付かないように釣り上げられた魚にはさまざまな特長がある。
まずは、何といっても見た目がよい。銀白に輝く一本釣りタチウオの美しさには思わず目を奪われる。身割れなどによって余計な塩分が入ることもないため、味も超一級。刺身で楽しめることはもちろん、煮ても焼いても上品な脂の旨味が口いっぱいに広がっていく。
タチウオの漁期は7月下旬から3月上旬。特に冬場は脂の乗った美味しいタチウオが水揚げされるという。「クロムツが釣れるのも寒い時期。一方でムギイカなどは初夏の風物詩ですね」と説明を加えてくれた鈴木さん。遊漁を楽しむ人たちは季節を問わず訪れるそうだ。なお、沼津我入道漁協が仕入れた海の幸の一部は「マルヤ水産 港直営店2号店」の一角にも並んでいる。人気のサクラエビやシラスもぜひ味わいたい。

すべてが自責であるという面白み

芹沢さんと鈴木さんに海の仕事に携わる魅力は何か尋ねたところ、口を揃えるようにして「すべてが自責である点」との答えが返ってきた。自らの技術や勘を頼みに海へ出て、それに見合っただけの対価を得る。鈴木さんは網元の流れを汲む父親のもと、漁師とサラリーマンという二足の草鞋を履いていた期間が長いため、自らの裁量で創意工夫しながら動ける点に大きなやりがいを見出している様子だ。とはいえ、漁業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、試行錯誤を重ねて働くことは容易ではない。それを面白いと言い切れるところに、二人の矜持が垣間見える。
併せて我入道という地域のよさについても伺うと「海の穏やかさ」を挙げてくれた。駿河湾の奥部にある我入道では強い風が吹き込むことが少なく、波も大きくなりにくいため、出船率が高いのだとか。船の出しやすさは遊漁船業を行ううえでも大きなメリットとなっている。
町全体の雰囲気も眼前に広がる海もゆったりとした我入道地区。漁獲量や市場規模は縮小傾向にあるものの、そこに暮らす人たちの誇りや漁獲物の美味しさは何ら失われてはいない。ちなみに、芹沢さんは妻との夫婦船によって漁や遊漁を切り盛りしている。二人で働いたからといって成果が二倍にならない点がこの仕事の難しさだが、うまく役割分担して海へ出ているそうだ。地域の何気ない営みにも思いを寄せながら、まずは我入道の魅力を知ってほしい。

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