「あれ、会議室の方からなんだか甘酸っぱい匂いがする……」
——ガチャッ
\ドンッ/

\ ドドンッ/

ゴゴ ゴゴ ゴゴ ゴゴゴゴ

ポケマルオフィスに突如として現れたみかん6箱。いったい誰が、何のために……!?
尾形よ、君は何者なの
山積みのみかん箱の持ち主は、ポケマル編集部インターンの尾形、通称「尾形さん」だった。

あ!みかん食べてる!!
尾形には謎が多い。
同じくインターンとしてポケマルで働いている僕:金澤が知っているのは、現在大学4年生でここポケマル編集部にてインターンをしていること。「みかん」に特化した学生団体「東大みかん愛好会」のメンバーであり、みかん大好き女子であること。それくらいだ。
そんな尾形が、大量のみかんをアルバイト先に持ち込むという謎の行動をしている。
「なぜ君はそこまでしてみかんを食べるんだい?」
これはきっと、今まで胸の内にしまっていた思いをぶつけるチャンスに違いない。
尾形に質問してみよう

下手な質問はできない、謎の緊張感が走る
おもむろにスマホを取り出すと、iPhoneの画面を見せてくれた。

メモ帳アプリがみかんの絵文字で埋め尽くされていた。毎日みかんを食べるごとに記録する「みかんカウンター」だという。
※尾形注:「アルベド」とはみかんのフサの外側に着いている白い筋のことです。
調べたところ、カルテノイド色素の過剰摂取により皮膚がみかんの皮のように黄色くなる「柑皮症」というものがあるらしい。
みかんや人参を食べ過ぎるとでてくる症状で身体に害はないようだが、そんなことが本当にあるのだろうか。
おわかりいただけただろうか。彼女のみかんに対する本気さを。彼女の脳内をイラストにしたらきっとこんなかんじだ。

80%という人体の水分量を超える数値がたたき出されたところで、「はやくみかんを食わせろ」という尾形の鋭い眼光に耐えきれなくなった僕。まだ用意した質問の3割しか終わってないけれど、質問タイムはこのへんで終わりにした。

全国からやってきたみかん6品種
今回尾形が買い集めたみかんは6種類、総額約1万円分(送料込)。生産者も産地も品種もバラバラだが、はたして彼女はそれらをどう評価するのだろう。
エントリーみかん一覧
- 青島みかん/神奈川県 鈴木順子さん
- 金賀みかん/静岡県 平野吉貢さん
- 南柑20号/愛媛県 高柳明さん
- 田口早生/和歌山県 堀内宣隆さん
- 宮川早生/大阪府 納家正弥さん
- 原口早生/長崎県 太田圭美さん
先ほどまでの表情が嘘のように、開封の段階から笑顔が止まらない尾形。毎日のように食べているのに、見慣れたはずのみかんでこんなに喜ぶとは。彼女は今きっとみかんと会話しているのだろう。

購入金額は合計9940円。みかんへの執着は予想以上である。
せっかくなので評価シートをつくり、①甘味、②酸味、③コク、④じょうのう(果肉を包んでいる薄い皮)の薄さ、⑤外皮のむきにくさの項目ごとに5段階評価をしてもらった。

ちなみに得点が高ければいいというものでもない。たとえば、尾形的「理想のみかん」は以下のようになっている。
尾形的「理想のみかん」のレーダーチャート


全ての項目においてみかんの好みは人それぞれ。ここでは尾形のコメントに注目しながら、おいしいみかんに出会う指標のひとつにしてもらいたい。

尾形、皮を剥くスピードと食べるスピートが常人のそれではない
1.神奈川県 鈴木順子さんの「青島みかん」
2.静岡県 平野吉貢 さんの「金賀みかん」
3.愛媛県 高柳明さんの「南柑20号」
4.和歌山県 堀内宣隆さんの有田みかん「田口早生」
5.大阪府 納家正弥さんの「宮川早生」
6.長崎県 太田圭美さんの「原口早生」
尾形、みかん6品種を前に確実にテンションがあがっている。
今までみかんの味の違いなどわからずにただ甘ければいいと思っていた筆者だが、尾形と一緒に食べる間に自分の浅はかさに気づきはじめていた。
利きみかん大会を開催します
——同じ温州みかんだとしても全然違うじゃないか。それぞれにしっかり特徴があり、甘さのジャンルも違う気がする……
目の前のみかんラブ子に導かれ、僕もみかん道の入り口に吸い込まれそうな気持ちになったが、ちょっと待て。尾形が一夜漬けの偽みかん女子の可能性もあるのだ。
そこで、尾形のみかんスキルは本物なのかを確かめるべく、利きみかん大会を開催することに。
ルールはこうだ。
【みかん1房をひとつだけ食べ、そのみかんの品種を当てる】
もしも尾形が偽みかん女子だったとしたら、それぞれの品種の特徴をこの短時間で記憶するのは難しいはず。
失うものなど何もない金澤と、みかん愛が本物かどうかを試されることになった尾形の、熱い心理戦が幕を開けた。

第1問
最初のみかんはこれ。いったい誰のみかんなのか、みなさんはわかりますか?



あちゃー
あっさりと当てられてしまった……。
第2問
今度は太田さんの「原口早生」。はたして……

余裕の表情
瞬殺。たしかに尾形レーダーによると原口早生は甘味とコクの評価が高かった。やばい、尾形のみかん愛、本物かもしれない……。
第3問
わーん、正直もうどれを選べばいいのかわからない。混乱しながら僕が手に取ったのは……

人生でもかかっているかのような悩み具合


田口早生と宮川早生の違いを"外皮のむきにくさ"で判別していた尾形。

尾形レーダー(微妙なコクの違いを見極められなかった私はまだまだです……by尾形)
ふふ……肝心の皮を剥いて房の状態で食べさせていた私が一枚上手ということだ。
しかし、とんでもなく落ち込む尾形をみてなんだか申し訳なくなってきた。この2種まで絞り込んでいた尾形、やっぱりあなたはすごいよ。普通わからないよ。
第4問
第5問
その後2問続けて速答だった尾形。間違えたのは1問のみ。本人は納得いっていないようだが、尾形のみかん愛を認めないわけにはいかない結果となった。
あなたにとってみかんとは?

何を言っているのかさっぱりわからなかったが、そこで僕が見たのは……

き、黄色い。他の人と比べても明らかに黄色い手のひらだった。
これはまさか「柑皮症」……? みかんを食べ過ぎるとβ-クリプトキサンチンの過剰摂取で皮膚が黄色くなるという症状……
そーゆーこと……つまり彼女は僕にこう問いかけているのだ。「この手を見ればわかるだろう?」と。この時僕は、自分がいかに浅はかな愚問をしてしまったのかを思い知らされた。
僕なりの「そーゆーこと」の解釈はこうだ。手のひらがみかんの皮のように黄色くなっている尾形は、徐々に「みかん」になり始めているんだと思った。尾形とみかんは一心同体……「尾形=みかん」なのである。きっと彼女は今後もみかんを愛し食べ続けるであろう。身も心もみかんになるその日まで。
みかん色の光が胸にひろがった気がした。
最後に尾形から一言。
なんとなくみかんが好き、大きくて甘いみかんだけが好き。そんな方はたくさんいるとは思うが、しかし僕らが思っている以上にみかんの世界は広く、深い。
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文=金澤善空