初対面なのに〝家族〟のように食卓を囲む。「食」の未来がやってきた。

「いただきま〜す!」

まだ昼間の蒸し暑さが残る7月13日夜、東京・上野にあるビルの一室に、明るい声が響き渡る。食卓には、色とりどりのトマト料理がずらりと並んでいる。

「おいしい〜!」

創意工夫されたトマト料理を口に運ぶ人たち。自然と笑顔がはじけ、会話もどんどん弾む。

中には初対面の方もいるのだそう。

え⁉︎見知らぬ人たちが集まって、食事をしているの・・・?

実はこれ、ポケマルが「食」でつながるコミュニティサイト「KitchHike(キッチハイク)」と手を組んで始めた新しいイベントの一幕。

この日は、ポケマル生産者・佐賀県の江島政樹さんから届いた「ひばりトマト」を集まったみんなでおいしくいただきました。

みなさんご存知の通り、ポケットマルシェ農家・漁師食べる人をつなぎ、「いただきます」「おいしかったです」などとコミュニケーションを交わすサービスです。

キッチハイク料理をつくる人食べる人をつなぐ交流サイト。そのミッションは「『食』で繋がる幸せな暮らしを実現する」こと。冒頭のようなゴハン交流会を、誰もが簡単に開催できます。

生産者のストーリーある食材を、みんなで食べるーー。

そうです、2つを一緒にしてしまおう!というのが新しいプロジェクトの目的です。

さて、そんな「ポケマル×キッチハイク」の新プロジェクトを記念して、7月11日に都内でリリースパーティーを開催しました。

会場は、BETTARA STAND 日本橋。

そして、新たなプロジェクトを発表!

今回は、ポケットマルシェ代表の高橋博之(左)と、キッチハイク共同代表の山本雅也さん(中央)・藤崎祥見さん(右)とのトークセッションを中心に、そのレポートをお届けします!

キッチンをヒッチハイクする

その前に、まずはキッチハイクについて、もう少し詳しくご紹介します。

お伝えしたように、キッチハイクは料理をつくる人と食べる人をつなぐ交流サイトです。

旅先の見知らぬ家を訪ねて、ごはんを食べようーー。山本さんは大手広告会社を辞めた後、これをテーマに世界各国を旅することに。つまり、「キッチン」を「ヒッチハイク」して世界を巡ったのです。

その経験から、「人は一緒にごはんを食べれば、自然と仲良くなる」「『食』を通して人と人が繋がる世界を目指そう」と決意し、その理念に共鳴した藤崎さんと「キッチハイク」のサービスを4年前に立ち上げました。

現在、会員数は約2万人、毎月100回ほどの食事交流会を各地で開催していて、なんと毎月600人以上の会員が一緒に食卓を囲んでいるんです。

「食」に革命を起こそうしているキッチハイクの試みは、ポケマルが目指すビジョンにもぴったり!すっかり意気投合し、出会ってから1カ月も経たないうちにコラボレーションが実現したんです!


ヤケド寸前⁉︎熱〜いトークセッション

トークセッションのテーマは「食べるとは」、そして「これからの食」。なにしろ「食」に対して並々ならぬ情熱とこだわりをもつ3人です。あつ〜く語ってもらいました!

キッチハイクの山本さんの「食」のお話は、なんと原始時代まで遡ることに・・・

会場では、ある絵が紹介されました。

その絵には原始時代の食事風景が描かれています。ある集落の女性たちが、男たちが命懸けで狩った動物の肉を焼いて、調理しています。動物の命に感謝しながら、村の人たちが一緒に食卓を囲み、それが共同体(コミュニティ)をつくっていく。そんな描写です。


昔、人々はきっとそんな風にごはんを食べていたはずです。でも、現代はどうでしょうか?ごはんを食べる行為が、栄養摂取に特化してしまっているように見えます。みんなで一緒に食卓を囲むことで、仲良くなったり、絆が深まったりする。「食」には本来、そういう魅力や側面があったはずです。


・・・すると、今度は高橋が別の絵を紹介して持論を展開することに。

それがこちら↓

(出典:石田徹也公式ホームページ

これは、現代社会を痛烈に風刺する絵画を手がけてきた画家・石田徹也さん(故人)が描いた「燃料補給のような食事」です。


客がファーストフード店に入って、口を開けてガソリンのノズルを突っ込まれているようなシーンです。客と店員の目が合っていません。初めて見たとき、はっと気付かされたんです。みなさんにとって「食べる」ことは単なる栄養補給ですか?私たちはロボットではないですよね?


さて、今度はこちらをご覧ください!最初に紹介した原始時代の絵を、「現代版」に進化させた写真です。これはキッチハイクの食事会の光景です。

驚くべきことに、全員が初対面なんです。こうして「食」を通じて、人と人がつながって、共同体が生まれる。そんな世界を、もう一度復活させたいですよね。


・・・一息つく間もなく、高橋がまた別の視点から「食べること」の本質に迫る問題を投げかけました。


原始時代の絵の背景には、マンモスがいます。これが現代にはない決定的な違いです。この絵は、きっと男たちが命を張って狩猟し、その肉を感謝しながらみんなで食べているんでしょう。

つまり、「生きる」とは他の生き物の命を殺めて、自分の命に変えることなんです。人間は殺生し続ける罪深い生き物。そのことに、昔はみんな感謝していました。


実家がお寺で、住職の資格をもつという藤崎さんも、大きく頷きます。


僧侶は一般に、なぜ肉と魚を食べないのか。そこには、生き物に対するリスペクトがあるからだと思います。人は、生き物の命を奪うことを避けては生きていけません。常に罪の意識を背負いながら、食べるべきなんです。


生産者が命を張って肉や魚、野菜を私たちに提供してくれている。そのストーリーを共有しながら、なおかつ1人ではなく、仲間と一緒に食べる。つまりポケマルとキッチハイクがコラボすれば、「食べること」の本質を現代社会に取り戻せます。

これからの食=「生きる」を奪還し、クリエイティブを生む

トークセッションは後半戦に。ここからのテーマは「これからの食」。私たちは何にどう向き合えばいい?そして、「食」の未来はどうなる?

平日にも関わらず、多くの人が駆けつけてくれました。会場にはトークの熱気が充満⁉︎

これからの食、それは「生きる」を奪還することだ。生きているリアリティを味わえない人が多いことは、現代における大きな課題です。


お〜、なんだか壮大な問題提起ですね・・・。


「働いて1人で飯を食って寝るだけの生活って、ロボットと何が違うの?」。以前、ある漁師からとそう言われたことがあります。生産性や効率重視の資本主義経済の中で、多くの人が人間らしい文化的な営みを忘れてしまっている。それを取り戻し、充実して生きる方法の1つが「食」を囲むことだと思うんです。いきなりすべて変えるのは難しいけど、例えば週に1回くらいは生産者に思いを馳せながら、家族や友達とゆっくり時間をかけて食べることならできるはずです。


一方、山本さんは「美食の町」として有名なスペインのサン・セバスチャンを例に、「食」の新たな可能性を見出してくれました。


サン・セバスチャンは、お酒のつまみで有名なピンチョスがとにかく美味しい!ほんの10年ほどで前まで世界からさほど注目もされない町が、今や世界中の観光客が集まる美食の町として知られるようになったのには、町中のバル(居酒屋・飲食店)でピンチョスのレシピをシェアしたことで、町全体にそういう文化が根付いた経緯があるそうです。つまり「食」は、シェアすることでもう一歩先のクリエイティブな何かを起こすことができる。そういう文化をポケマルと一緒に作り上げていきたいですね。


食事会は今後も目白押し。一緒に「食」の未来をつくりましょう

とはいえ、まだ産声を上げたばかりのサービスです。みなさんの協力をいただきながら、じっくり、そして大きく育てていこうーー。会場は、そんな「食」の明るい未来を目指そうという連帯の空気と高揚感に包まれました。


「早く行きたきゃ1人で行け、遠くに行きたきゃみんなで行け」。私の好きな言葉です。私たちが描く未来に向かって、ぜひ仲間として一緒に歩んでいきましょう。そして、どんどん周りの家族や友人に伝えてください。


食の新しい文化や仕組みをつくるには、たくさんの仲間が必要です。みんなが協力して初めて、実現できることだと思ってます!


そういう意味でも、キッチハイクやポケマルを使ってくれる人が増えれば、その分だけ私たちが目指す「食」の未来に早く近づけます。今日という日が、30年後、100年後に「食」の新しい文化が生まれた瞬間だったと、評価される日にしたいですね。

当日はキッチハイクの人気COOKであるMahoさん(右)がポケマルの食材を使って調理してくれました。

お料理の主役は、ポケマル生産者の小山直樹さんの甘〜いトウモロコシと、高野粋さんの北海道のタコ!

おいしい食事を、みんなで楽しく味わう。自然と会話も弾みました。

最後は揃って記念撮影。みなさんぜひ、ポケマル×キッチハイクの新プロジェクトにご参加ください!

ポケマル&キッチハイクのコラボ食事会に参加したい!という方は、詳しくはこちらをご覧ください!

https://kitchhike.com/brand_portfolios/593fcda8528beb7e6900054e


漁師が直接教えてくれる料理会や、たくさんの贅沢たまごをつかうオムレツ会など。

「生産者さん直送の食材をみんなでおいしくいただきます!」をテーマにしたコラボ食事会は、続々と開催が決まっています。

皆さんのお越しを、心からお待ちしております!


■ライタープロフィール

近藤快


化粧品専門誌の記者として8年勤務。東日本大震災後、業界紙・東北復興新聞にプロボノで参加、その後専属に。他に、企業のCSR・CSV、一次産業、地方創生などのテーマで取材〜執筆している。