玉ねぎと生産性

 いろいろ作ってると、暖かい時期は新たな品目が続々と登場しては無くなっていきます。無くなれば、次に食べられるのは来年の同じ時期。シーズンの始まりと終わりで美味しさも違ってくるわけで、その日の食卓ってのは一年に一度しか出会えません。
食べたいものが食べたい時に手に入るわけではないけれど、こんな一期一会的な食卓に豊かさを感じられる心の余裕。こんな時代を生き抜くための武器。農家になって良かったなと思っています。
そんな食卓や謎のニューカマー野菜写真ですが、ブログの話題は別です。
野菜の生産性について。
今年の大豊作だった玉ねぎ。おかげ様で、予約分も多くもうすぐお終いです。
乾燥設備や貯蔵庫を持ってないので、梅雨の早い段階で売り切ってしまえるのはほんとありがたいです。
で、この玉ねぎの値段なんですが、正直言って、割に合ってません。
それなら「割りにあう価格に設定すればいい」もしくは「作らなきゃいい」だけなんですが、そんな単純な話で済むわけはなく・・・
玉ねぎ、ジャガイモなどの北海道のイメージの野菜は、ほんとにイメージ通り大規模に生産される場合が多いです。大型機械と大型の貯蔵・輸送の仕組みの中で、ギリギリまで頑張って生産性が高められています。もちろん他の野菜も同じだけど、特に大規模化によって支えられてる品目です。

奇跡の玉ねぎを目指すか?

うちみたいな小規模農家が、ほんの数畝分だけしか作らない場合なんて、価格面では到底敵わないわけです。
そんなわけで、うちの卸値は普通の市場の2〜3倍の価格設定になっています。店頭価格でもそれくらいの差になってるはずです。それでも買って頂いているってことはほんとにありがたいことです。
ぎりぎり許していただける範囲なんだと思います。
だけど、それでもまだ割りに合ってないんです。今の3倍くらいの価格であればもっと増やしてもいいかなと思います。あくまで、いまの施設や作り方の体系でやればの話です。もし本気の「玉ねぎ農家」になるつもりで、適切な投資をして大規模化して単価を下げるという方法もあります。
いまのやり方でも「割りにあう価格設定」にして、10倍の価格とかでも売る方法を工夫うするのもひとつの回答だと思います。そんな農家さんもたくさんいます。
もちろんそれに見合う品質を出すのもすごい技術だし、そんなプロモーションにかけるコストも相当のはずです。
でもうちは、あまり得意じゃないし、そんなにやりたいとは思いません。もっと他の事に力を入れたいです。
ちなみに東京に暮らしてた頃の僕の給料じゃとてもうちの野菜は今の値段でも買えないと思います。

ホントはもっと作りたいのだ!

ふたつめの「作らなきゃいい」を選択しない理由は、うちが多品目農家だからです。
多品目という形態の中でも、個人むけの宅配だったり卸売りだったり、他にもいろいろな形態があります。うちはほぼ全て業者さん相手です。さらに、業者さんにも大規模な流通業者から個人商店までいろいろあって、うちでは店舗で営業されているお客様がほとんどです。
そんな業者さんに、毎週出荷可能な野菜情報を送り、必要な品目を複数組み合わせて注文していただきます。(「普通の農家」さんにとって、これは衝撃的な販売方法です!)
組み合わせの品目の中で、ジャガイモ・玉ねぎ・人参などの必需品的な品目があるのは頼みやすい条件のようです。品揃えで持っていれば、バンドルで他の品目にも注文が入りやすいわけです。
ようするに、他の品目と組み合わせた上で「割りに合えばいい」わけで、玉ねぎ単品では赤字でも、他で取り返せれば問題ないわけです。
とは言え、これ以上やれば仕事ではなくボランティアになってしまいます。真冬の草取りなどは実際にボランティに来ていただいてたりもしてます。
マルチ張りの機械を導入するとか、まだ他にも道はあります。何にどれだけ投資し、どこから回収するか。
インーアウトの関係が複雑すぎる多品目農家を象徴してる玉ねぎ問題なのです

天気の回復待ちのジャガイモ掘り。

一足先に試し掘り!

からのじゃがバタ

暑くなってきて、玉ねぎが始まって。お気に入りメニューの「酢っ玉ねぎ」

塩もみ玉ねぎスライスの甘酢漬け。

ポイントはディルシード。緑の付け合せはスティックセニョールの「スティック」部分

予告通り、自家消費で独占のグリーンピース(正体は取り遅れてしまったスナックエンドウ)の豆ごはんとズッキーニカレー。

全部うちの野菜。ズッキーニはたっぷり油でソテーしてトッピングの方が美味いなという結論。

(2016.6.7)

Writer

大分県由布市

竹林諭一

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