新規就農者はなぜ自治体の説明会に向かうのか?

「新規就農希望者はなぜ自治体に相談に行くのか?」

答えは簡単。就農ハウツー本に「まずは自治体の相談会に行け」と書いてあるからです。

僕らもまずは都市で開催されている就農相談会に行きました。法人のブースは少なく、自治体の方が圧倒的に多かったです。
それも5年前の話なので状況変わってるかもしれませんが。

僕らもなんの疑問も持たず、はじめは真面目にハウツー本通りに自治体巡りをやってきました。

それでスマートに就農に辿り着く場合もあります。そうじゃない場合もあります。うちらはすごい遠回りをしてしまった気がします。もちろん違う道だったら近かったってことは無く、かなり「運」の比重はでかいと思います。

自治体への相談で話が進む場合とそうでない場合。なにが違うのか、なんとなく分かってきました。

(先に行っときますが、自治体の職員さん達のことを悪く言うつもりはありません。みなさんとても親切で、知っている知識と決まりの範囲で、すごく親身になっていただきました。その点は感謝してるけど、結果には結びつかない。なぜか??ってことをうちらなりに考察してみました。)

(普通の)自治体が想定する農業の定義と新規就農者のそれとがかなり違うんです!

案外、都会で夢見る「農業」は自治体が想定する「こうしてほしい」農業でない場合が多いんじゃないでしょうか?夢が具体的であればあるほど、そうなる気がします。
僕らが脱サラした時点では、どういう農業があるのか知りたいという情報収集の段階でした。近場の自治体の説明会を回ってみると、あちらから「この地域ではコレとコレとコレ」みたいな明確な選択肢を示してくれます。
経営の指標や就農までのみちのり、使えそうな農地などかなり親切に用意されてます。

これがドンピシャで希望にハマってたら幸運だと思います!研修先から使える補助金まで、ほんと親身に世話してくれるはずです。
農家のエリート街道まっしぐらです。(たぶん)

ところが、うちらの周りには多いそれがなんかビミョーに見えてしまう一部の就農希望者。

例えば有機農業。自治体の資料には経営を成り立たせる有機農家像はありません。失敗事例はたくさんあるようです。(たまに有機農業もきちんと経営面で認めてくれてる所もあります。)
さらに、自治体が定義する「失敗」は、当の本人にとっての「理想」だったりするわけで、とても話はややこしいのです。

農的生活とか半農半◯◯も、実は農政課の担当ではないのかも?
今でこそ定年後の生活で農村を目指す方が増えたので、それなりに理解はあるけど、実際農政の部署ではなく町おこしとかを担当する部署の方が本命かもしれません。
そこら辺はいかにも役所の縦割り体質丸出しなで話が進まないことが多いので、いい加減改善してくれって思います。

お互いの認識の違いについて書きましたが、「自治体への相談」はそもそも本質的な部分でおかしいのです。

最初の疑問に戻りますが、なんで「まずは役所に相談」なんでしょう??

他の業種だったら「まずは役所に相談だ!」なんてありえないです。
不動産屋行ったり、設備必要なら中古屋さんに行ったり、銀行行くことになるはず。役所行くなんて、登記とかそういう手続であって「ラーメン屋始めたいんですけど」なんて役所に申し出る人はまずいないでしょう。

「トンコツならこれくらいの収益で・・・そういえば駅前にいい物件ありましたね、あの辺は食堂もなくて・・・」なんて話を役所でしてるようなもんじゃないですか?

自治体に対しても言いたいことはある!
時代は新規就農ブームから呼び込みブームになりつつあります。手当たり次第「ぜひうちに!」みたいな地方納税的な乱獲やってませんか?
逆に、「それは農業ではないから無理です、しないで下さい」みたいな門前払いしてないですか?

その地域では当然の農業モデルも都会の住人にとっては全くの想定外だったりすることがあるわけです。僕らも、田んぼと畑の違いなんて知りませんでした。「田舎には土地が余りまくってる」という都市伝説が都会では普通に信じられてるんです!!

仕事としての農業希望者だけなく、多様な価値観を持った方達が田舎にやってきています。どんどん増えてる気がします。
自治体に求められてるのは受け入れるかどうか決める仕事ではないはずです。それはこっちが選ぶことです。
「こうしてほしい」農業以外の選択肢にも目を拡げて、柔軟に可能性を模索してみてもいいんじゃないでしょうか?自治体的にはあり得ない・不可能な土地や物件がその人にとっては理想郷だったなんてことが、これからけっこうたくさん起きると思います。

(2016.9.24)

Writer

大分県由布市

竹林諭一

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