天日干し希少なササシグレ 25〜26年

2025年産米 ●米騒動とくま騒動と異常気象 令和の米騒動もありお客様も価格などに敏感になっているかと思います。2025年秋の時点ではスーパーなどでは5kg4000円台というのが普通になっています。 我が家のササシグレは杭に掛けて天日干しするなどの手間や希少な品種という事もあり元々割高です。 そんな中でお米の価格が、杭掛け天日干しとスーパー店頭の差がさほど無い状況となっている事や、我が家でも諸々の経費は上がり続けて、昨年同様の価格では利益が出ないため、心苦しいですが、2、3割の値上げとなってしまいます。 その分、値上がり率は極力抑えたり、満足度は下がらないように頑張って行きます。 また秋頃から騒ぎが大きくなっている北海道や東北、北陸、中部を中心とした｢くま騒動｣も我が家は影響を受けています。 200本くらい栽培している庄内柿は40本以上も枝を大きく折られ、実を食べられ、酷い柿畑は収穫量が4分の1程でした。 さらに被害あった柿畑近くの白菜は、柿もぎ終わると一気に食べ尽くされ、80株近く無くなりました。冬の備蓄野菜として、にわとりの冬の餌として育てていました。 東北も40℃に迫る日が多く、記録的な干ばつもあり、暑さからなどでカメムシによる食害も地域で広く発生し、今までにない規模のカメムシ被害となっており、そこに米騒動やくま騒動と、中山間地域での農業は厳しい環境にあります。 値上げしても理解してくださり、応援の気持ちも込みで買っていただけると大きな励みになります。 ●杭掛け天日干し 　中山間地域で栽培面積は小さいが、冷たい雪解け水の恩恵があり、昔ながらの杭掛け天日干しなど手間もかけております。 　杭掛け天日干しはとても手間がかかり、何よりササシグレの稀少性もあり、割高であることをご理解くださいませ。 　稲束で刈り取るバインダーという機械を使い約50束づつ杭に掛け、1週間ほど天日干しし、均一に乾燥させる為に天地返ししてさらに1週間天日干ししてからの脱穀となります。 　台風の時期にも重なりやすく、管理は時間と汗の積み重ねです。まだコンバインなど無い頃の昔の農家はこれが当たり前でした。 コンバインで刈り取る場合より稲の茎の養分を最後まで吸い上げてからの脱穀、籾摺り、精米となります。 ●地の利は不利な豪雪地帯と雪解け水 　霊山としても名高い月山や湯殿山に繋がる山並みの麓にある我が家は2～3mもの雪に閉ざされている期間が3ヶ月ほどある豪雪地帯で、日本国内でも稀有な真夏にスキー場がある程に夏も山には雪があり、夏でも冷たい雪解け水が田んぼに入ってきます。 　寒暖差の大きさや冷水の刺激で稲にストレスがかかり、収量は落ちますがたくましい稲になり、美味しいお米になります。 ●ケイ素・シリカ 　雪解け水にはお米の生育に欠かせないケイ酸（ケイ素（シリカ））が豊富です。 　ケイ酸が稲に吸収され、稲の茎葉が強くなります。人間の髪、爪、肌にはシリカは欠かせませんよね。 　毎日ずっと葉などから吸収発散し続ける水の違いって実はかなり大きい。あなたが食べているお米の育った水はいかがですか？ ●施肥管理 　蛍がたくさんいる地域でもあるので、水稲の消毒は蛍に影響しやすいという事もあり、我が家は防除もできるだけ心掛けています。 　お米に限った話ではありませんが、農業は環境や自然を保全する最前線でもあります。疲弊した土壌や残留農薬を後世に残すなんてあり得ません。 ●やっとここで品種のお話 　ササシグレはササニシキの親品種でコシヒカリなどのもち米系統が入っていない稀少な品種で、今では極わずかしか作られていません。それは収量が少ない事や、米粒が小さめの品種でコメの品質基準で特Aを取ることが難しいからです。ですが味や香りではササニシキを上回ります。 ●アミロースが多いって？ 　昔の品種でもあるササシグレは最近では高アミロース米と言われ、全国の米の9割以上を占める今時のもちもちしたコシヒカリ系統とは真逆の品種です。 　でんぷんはアミロースとアミロペクチンからできており、高アミロースとは消化のいいアミロースが多く、もちもちして旨みも出やすいが消化されにくいアミロペクチンが少ない品種です。 　ササシグレの祖先はもち米系統が入っておらず、昔ながらのうるち米の本来の香りと食味の良さがあります。 ●消化の良さ 　米アレルギーは低アミロース米で起きることが多く、高アミロースのササシグレは、消化がいいため血糖値が上がりにくく、お米アレルギーの人が食べたりもできるそうです。 　要するにブドウ糖に分解されやすく消化がいいのがササシグレ、ササニシキという事になり、ササシグレは特にアミロースが高いのです。 ●食べ方・食べ分け 　一口目からインパクトのあるコシヒカリ系統とは違い、ササシグレは穏やかに香りがよく、噛んでいると後から美味しさが感じられます。 　おにぎりや弁当に入れるとコシヒカリ系統よりは固くはなりやすいですが、ネタの味を邪魔しないので、お寿司のシャリによく使われております。一般にもササシグレは夏バテして食欲がない時は消化が良く胃腸に負担を掛けず、さっぱりしていて適していますので、残暑の厳しい時に食べるといいです。 　炊きあがりは香りも良く、食味の優しさから箸が進みます。ササシグレに慣れると、コシヒカリ系統は重く感じてきます。だから毎日ササシグレにと言いたい所ですが、なんやかんや言っても山形でいえばつや姫や雪若丸など新しい品種も美味しい事は間違いありません。 　ササシグレは他に香りの良さから米麹や甘酒にしてもいいのですが自分で米麹を作るのはハードルが高いですね。 　奇跡のリンゴで有名な木村秋則さんがササシグレを勧めて一部では話題となりました。 　消化がゆっくりなので、赤ちゃんの離乳食にするのにもモチモチしたお米より向いています。 ●暮らしと藁と伝統 　コンバインで収穫しますとわらが細かく裁断され田んぼに残していきます。次の年の田植えの頃までに土に還るわけです。 　ですが昔は藁は日本の暮らしの中で一番活用されていた素材のひとつで、生活用品、農業資材としても使われ、藁なしには暮らしていけませんでした。 　ですが今では農業資材も藁の米俵を使う事があるわけもなく、ビニール、プラスチックなどになっていますし、農機具もいろいろ大型化しています。 　我が家は中山間地域で大きい農機具も使い難いので家族総出で稲刈りをしています。藁も雑草除けや、鶏の寝床に使っています。 ●神事と藁 　数年前より地元の親戚の神社より藁を分けて欲しいとの連絡がありました。黒川能という国の重要無形民俗文化財の残る春日神社と、縁結びや修験の山としても有名な金峯神社からなんですが、どちらも1000年以上の歴史があります。　我が家が自分で十八代目で400年近い歴史なんですが霞んでしまいます。 　神事や注連縄に使う藁が手に入らないという事でした。どちらの神社も軽トラの荷台に山積みにするほど持っていき、1年で使い切ります。 もちろん神様を祀る所に使うのですからありがたく提供しましたが、それほどまでに縄を綯えるような稲藁がコンバインの普及で無くなっているのです。 　歴史ある神社の本殿などの注連縄のためにも杭掛け天日干しは止められません。 2025年秋に稲藁を提供している春日神社の例大祭｢王祇祭｣までの準備や神事を撮影した｢王衹様と暮らす｣というドキュメンタリー映画ができ、まずは鶴岡市で上映されました。 その映画の中には我が家の稲藁ももちろん出てきますし、自分や妻、両親も映画に出ていました。早く全国で見られるようになると嬉しいです。 　日本人にとって原種に近い品種であり消化のいいササシグレ、そして伝統的な暮らしや祭、工芸にも大切な藁、お米を食べることを考え直す機会にしてもいいのではないでしょうか？ ●販売について 価格は昨年より約300円値上げと抑えておりますが、手間のかかる天日干しのため、キロ1,700円くらいとなっています。 　昨年までは送料を抑えるために4kg、9kg、14kgで販売してましたが、今年は少しでも購入してくれる方に喜んでもらえるように工夫するために5kg、10kg、15kgでの販売となります。玄米は精米した白米と価格は変わりません。 玄米は色選別がしにくいため、色味の悪い米粒が稀に含まれることをご了承ください。 　精米は白米、玄米以外に五分や八分搗きなど対応していましたが、夏にはいつも売り切れてしまう事もあり、分搗きは定期購入の方を除き休止しています。詳細はお問合せください。 またお問い合わせいただければ、その時期の野菜、果物、たまご、山菜などをセットで販売できます。また食べ物以外に我が家のオリジナルの注染の手ぬぐいや鶴岡のご当地イラスト入りのトートバッグ、東北食べる通信の庄内柿特集号などをセットで販売する事も可能です。 　 　分からないことがあれば気軽にお問い合わせください。金三郎十八代目でInstagramを探して下されば我が家の多様な農産物を見ることもできます。 長文、最後まで読んでいただきありがとうございます。