本日あと 19点
99
商品説明
『じいちゃんの米』
子供の頃は思わなかったのに、大人になってから僕は、じいちゃんという存在は不憫だなと思った。
じいちゃんが働いて建てた家でも、ぼくらはずっと『ばあちゃん家』と呼んでいた。
じいちゃんが働いて稼いできたお金でも、こづかいを手渡してくれるのは『ばあちゃん』だった。
なにをするにも『ばあちゃん』が先にきて、『じいちゃんのおかげ』的なことにはなりづらかった。
けれど僕のなかで唯一といっていいような『じいちゃんの』があった。
それが『じいちゃんのお米』だ。
おそらく僕は、産まれて物が食べられるようになってからずっと、じいちゃんのお米を食べて育っている。
幼稚園、小学校、中学校と成長していっても、何年も何年も僕の記憶の中でじいちゃんは田んぼにいて、お米といえば『じいちゃんのお米』だった。
今でも僕はうちにお米が少なくなると、ばあちゃんの家に行ってじいちゃんのお米を譲ってもらう。
もちろん相馬の米、なかでもじいちゃんのお米は格別に美味い。
何か賞をとるようなお米でもないし、特別なことをしているわけでもない。
小さい頃からずっとじいちゃんの姿を見てきたから、僕にとっては一番美味い。
けれど、僕が見てきた背中は30年も時を経て、終わりの準備にとりかかるような年齢になっていた。
手に力が入らない。
足が痛む。
具合が悪い。
そんな日が少しずつ増えていき、今では毎日そんなふうに言うようになってしまっていた。
いつかはと思っていたけど、もうすぐじいちゃんのお米も食べられなくなるんだなと思うと寂しくもなった。
だからこそ、じいちゃんが辞めるまでのあと数年のうちに、僕が代わりたいとじいちゃんに言った。
じいちゃんは代わりたいと言った僕の顔を真っ直ぐは見なかった。
けれど少し間をおいて、安心したかのように『うちにある機械は使え』と不器用な答えを返してきた。
あと2、3年ですべて交代するかもしれない。
そしたらもうじいちゃんのお米は食べられない。
けれど、これでいい。
あと30年もしたら、次は僕が育ててるお米が孫たちから『じいちゃんのお米』と呼ばれてるだろう。
食味でも数値でもない、家族から『うちのがいい』と言われるような、想い出をご飯茶碗に詰められる米農家に僕もなりたい。
長い長い説明になりましたが、そんなわけで、うちのじいちゃんの米、ぜひ皆さんにも食べてもらいたいと思います!(数年後には「僕が作った米」がポケマルに出品できるよう、これからがんばります。)
~おまけのブログ~
2015.10.22の大野村農園facebookより。
つい数日前の日、予定があり二歳の息子を僕のばあちゃんに預けると、その日がばあちゃんの家の今年最後の稲刈りの日で、ひ孫にあたる息子も一緒に稲刈りに連れてってくれました。
うちでは農園という肩書きで畑を耕してはいますが、田んぼは一切やっていないため息子にはまったく見慣れない光景。
途中息子がどうしてるか気になり予定を切り上げ田んぼに様子を見に行ってみると、ばあちゃんはいるのに息子の姿が見えない。
どこに行ったのかと思ったら、なんとばあちゃんの背中におんぶされてニコニコしていました。
ばあちゃん曰く、田んぼの四隅の稲を鎌で刈る間じゅうずっと背中にへばりついてたらしい。
疲れた疲れたと言いながらも、嬉しそうな顔で笑うばあちゃんは僕には懐かしかった。
今から20数年前、僕も同じようにばあちゃんに連れられて確かにこの田んぼにいた。
じいちゃんは古いコンバインを動かし稲を刈り、ばあちゃんは機械がうまく入れない田んぼの四隅を鎌で刈って回る。
そのばあちゃんの後ろを、手のサイズの合わない大きい軍手着けた僕が鎌を持ってついていく。
手伝いになってたのかよくわからないような手伝いを、ばあちゃんたちは毎年歓迎してくれていた。
あの頃は本当に楽しかった。
その楽しかった思い出を、僕の息子が僕の目の前で再現している。
もうそれだけで、じいちゃんにもばあちゃんにも心から感謝したい気持ちでいっぱいになった。
子供や孫を連れて稲刈りに来るような、こんな光景はうちだけが特別だったわけじゃない。
田舎ならどこの家庭でも見れたこの光景が、もうすぐ無くなりそうになっているのは僕には怖くて、すごく寂しい。
じいちゃんとばあちゃんが僕らにしてくれたように、僕も自分の息子にも、孫にもひ孫にも、代替わりしてもずっとこの光景を次の世代に見せてあげられるように、この土地を守りたいと思えた一日だった。
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- 冷暗所で保管
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- 福島県
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