焼畑で作った自家採種の宝谷かぶ

焼畑農業というのは手間ひまの多さや大量生産、農地の基盤整備、林業との両立の難しさから消えてきました。 鶴岡市は日本有数の焼畑農業の残る土地で、しかも栽培されている作物は、地域固有のかぶですが、在来作物でしか焼畑農業は残っていません。 焼畑は耕耘・施肥を行わず、焼畑の火力で雑草、害虫、病原菌を抑えたり、熱によって土壌の窒素組成が変化し土壌が改良され、肥料を使わずに管理します。 有機栽培とも少し概念が違うと思います。 どちらかと言えば自然栽培かな、農薬や肥料を使わないことにスポットを当てるのではなく、林業からの森林の循環再生や、本来の大地の力強さを活かした古来からの農業という事です。 アマゾンなどで不法な森林伐採と焼畑による農地の拡大などが地球温暖化や森林火災などの大きな問題を起こしています。そういう環境破壊レベルの焼畑ではなく、焼畑した土地はカブの後に蕎麦を蒔いたり、木材向きの樹木を合間に植えて育成します。 日本の伝統な焼畑は火と土の力を使い、自然への敬意を持って行います。ほとんどが急な斜面で作られることもあり、この宝谷かぶは細長く曲がった形が特徴になります。 我が家でも斜面を使い、あまり広くはありませんが、焼畑で作りました。乾いた枝を集め、敷き詰めるだけでも狭いのに丸一日以上かかりました。 さらにそこに火を付け、ほとんど焼き終わり、燻っているうちに種蒔きする事で熱で発芽を即します。 普通のカブであれば肥料を入れて耕作し播種し、間引きや草刈りなどし、作られますが、時間にして何倍もの手間が必要です。 ですからとても割高ではあります。ポケットマルシェが1700人ほど畜産や漁業なども含め生産者いますが、伝統的な焼畑で作る農作物の出品は自分くらいだと思います。 価格もスーパーで見るカブの3〜5倍は高いと思いますが、正直手間を考えるともっと高くしないと収益としては厳しいです。 今年はまずお試しの価格で。来年は販路が広がりますし、焼畑は天候によっては失敗もありうるので、この貴重な機会に買ってもらえれば。 本来ならもっと辛味や苦味がありますが、今年は雪が積もり甘さが増し、辛味苦味が少し落ち着き、生でも火を通しても非常に複雑な旨味があります。 おそらく焼畑のかぶの旨味はグルメな人やベテラン料理人であってもほとんど食べることは無いと思いますので、この美味さには衝撃かと思います。 皮は剥かず、髭根のみ取りお使いください。到着後葉は早めに切り離すと葉もカブも長持ちします。 鶴岡市の高地で畑山さんという方が高齢ながら1人で種取りし続けてきました。近い将来にお孫さんが引き継ぐという事で、何とも嬉しい限りです。近くの採種家の方が平行して種取りしてくれており、その貴重過ぎる種からさらに自分が種取りを2年ほどしたものです。 火に田んぼで畑山というまさしく焼畑の為の人？な畑山さんが頑なに守ったこの宝谷かぶは歴史もさることながら、本当に美味しいから残されてきました。 鶴岡の有名イタリアンレストランのあるけっちぁーのでは宝谷かぶのピザなどが有名でもあります。 皮を焦がして牛肉と合わせて塩のみなんてのも素晴らしい味でした。 味噌汁にしても美味しく、サラダや和え物には生でも加熱しても。すりおろして蕎麦の薬味に。 葉と一緒に天ぷらにすると甘さが際立ちます。 伝統的な味噌漬けも美味しいですが、ぬか漬けや浅漬けなども大丈夫かと。 ドカ雪が降ってしまったので、葉付きでも葉が少し折れたりなどしてしまいますが、雪により旨みも増しました。また今年の種取りで少し本来より大根に似た変形も出てますが味も変わりません。 焼畑なので、農薬も肥料も不使用でもちろん耕作もしませんが農地ではない所もあり、有機ＪＡＳなど公式な認証はありません。 貴重な焼畑の宝谷かぶを僅かですがぜひよろしくお願いします。