「ふう、、、ちかれた〜；。」 モニタースクリーンの電源を切り、武藤べに は目頭を押さえた。 ここ最近、自身の研究結果をまとめる作業に追われている。 １日８時間以上は研究室に篭り、 画面を見ながらデータ処理する日々を過ごしている。 カチャ。 メガネを折りたたんで机に置く。 ブルーライトカットのメガネに眼精疲労軽減の効果がはっきりとは 確認されていないという学術誌の論文を知ったのは最近だ。 背もたれの大きめな椅子にのけぞりながら、大きく伸びをした。 「あ〜あ。たまには田舎でのんびり遠くの緑でも見たいな〜。」 自分でもビックリするくらいの大きな声での独り言に 一瞬笑いがこみ上げる。 それも束の間、先日提出した論文がリジェクトされたことを思い出す。 休日にも関わらず再度データの検証をしている自分に うんざりした気分になる。 気分転換にと、 研究室の冷蔵庫を開け、冷やしたコーヒーを飲もうとした。 その時。 目に止まった。 【べに先輩、お疲れ様です。眼、労ってくださいね】 マスキングテープに書かれたその文字は、後輩の工藤が書いたものだと わかるまで、時間はかからなかった。 丸いタッパに、熟したブルーベリーが詰まっている。 確か工藤の実家は和歌山でブルーベリーを栽培していると 聞いたことがある。 昔絵本で見た、ユニコーンの瞳を思い出した。 。。。（感動） 一粒、食べてみる。 完熟したベリーの味と果汁が、ジュワッと口に広がり、 独特の爽やかな香りが鼻からスッと抜ける。 心なしが、眼の疲労が回復した気にもなった。 「よ〜し、後一息、頑張るか！！」 さっきよりも一段と大きな独り言だった。