埼玉県狭山市

牛窪伸幸

さやまマイファーム

トマト、里芋、サツマイモ、ルバーブ

◆狭山◆
さやまマイファームの牛窪伸幸です。私は350年ほど続く入曽(埼玉県狭山市)の農家に生まれ、育ちました。かつてこの地は武蔵野の雑木林に恵まれ、緑豊かな農村地帯でした。しかし都市化が進み、昭和30年代に800haほどあった狭山市の緑地も今は半分以下となり、耕作放棄地も30%を超えるまでに至りました。
さやまというと「お茶のまち」をイメージするかもしれませんが、実際生産量はごくわずかで静岡や京都などに比べれば雲泥の差です。里芋は地域のブランド品となっており、年末の書き入れ時にはテレビでJAへの出荷の様子がよく取り上げられています。他にもホウレン草や枝豆なども大都市に近いという地の利を生かして栽培が盛んです。おそらくJAに安定して出荷すれば食べるにはこと困らないと思います。しかしながら私はあえてその道を断ち、オンリーワンの農業への歩みを始めました。

◆JA出荷への疑問◆
私は大学卒業後一般企業に就職しました。家業を継ごうとはこれっぽっちも頭になく、両親にも何も言われなかったので、とりあえずどこかの会社に入って給料をもらえれば良しと考えていました。農業を始めるきっかけは特にありませんでした。結局そこそこ仕事はこなしているものの仕事に面白みを見出すことが出来ず、何度か転職して社会人15年目を機にサラリーマンを辞めてしまいました。農業がやりたいということではなく、他に選択肢がなかったので家業を継ぐことにしました。
当時うちはお茶の栽培をして新茶を親戚のお茶屋に納めていました。そして漬物屋さんに契約栽培で春と秋に大根を出荷していました。JAには里芋と人参を出荷していました。特にブランド品である里芋には10等級もの選別規格があり、大きさが少し長いとかへこみが目立つとかいうだけで1等級落として選別しなければなりませんでした。人参にしてもほんの少しのキズやわずかな黒いシミがあっただけで等級を落とすことが決められていました。つまりJAは形と見栄えだけ揃っていればそれがブランドを支え、高く販売できると考えているのです。逆に言うとそれは取引先である仲卸などの市場のニーズに応えているということなのでしょう。でもそれは本当に流通の末端にいる消費者が求めることなのでしょうか・・・?
JAへ野菜を出荷すれば全量を買い取ってくれるというメリットがありますが、販売価格を自分では決められなし、農協や市場への手数料や運賃そして箱代などの経費もかさみ、結局自分の手取りに満足がいかないということもあります。
私はJA出荷以外の販路もいくつもあっていいと思っていますが、これからの農家は基本「自分で作って自分で売る!」ぐらいの気概が必要だと思います。JA出荷は便利ですが、「JAの言う通りに作るだけ」になってはよくないと思っています。成功した農家の多くは「自分で作って自分で売る!」農業を実践している人が多いようです。「自分で作って自分で売る!」という気持ちがあるからこそ、品質の向上や他の作物との差別化に率先して取り組めるはずなのです。

◆オンリーワンの農業への歩み◆
私はJAとの取引を減らす一方、「自分で作って自分で売る!」の精神で、うちが持っている雑木林の一角で軽トラに野菜を積んで販売を始めました。そこは大きな病院が近くにあり、通院患者や職員そしてお見舞いに来る人もかなり多いので需要はあると考えたからです。ただしその日収穫したものをその日に売りたいと思っていたので、どうしても職員の帰る時間などを考慮すると夕方4時からの販売スタートとなりました。当初あまり売れませんでしたが、だんだん一人二人とお客さんが増え、順調に売り上げを増やしていきました。しかし夏場の暑さととくに真冬の寒さには体も耐えきることが出来ず、数年間続けたのち悔いはありましたがやめることにしました。
実はちょうどやめようかと考えていたところに地元で食料品の小売りをやっている方から「野菜を売りたいので協力してほしい」と引き合いがありました。その店はうちから車で3分もあれば行けるところなので、条件を聞いたのち二つ返事で承諾しました。
私は常日頃考えていることがあります。それは「自分自身は生産者でもあり消費者でもある」ということです。当たり前のことですが、厳密にいうと、私は「食へ」のこだわりを持った生産者であり消費者でもあるのです。人間誰しも「美味しいもの」を食べたいはずです。ですからとりわけ生産者である私自身が美味しい野菜の見極めと、美味しい野菜の調理の仕方を知らなければ、自分でいい野菜だから買ってくれるだろうと思っても見向きもされないこともあります。そのことを肝に銘じられた出来事がありました。
ある日店で野菜を並べていたところ、幼稚園児ぐらいの女の子を連れた親子が入ってきました。どうやら二人の会話を聞いていると枝豆を買いにやってきたようでした。女の子が「ママ、これだよね」と私が作った枝豆を母親のところに持っていきました。そうしたら母親はこう言いました。「それじゃなくてこっち」と・・・。お母さんが手に取ったのはレトルトの枝豆でした。その時私は「何だよ?そっちかよ」と唖然としてしまいました。私はレトルトの枝豆も食べたことはあります。それなりの味はしましたが、自分でちょっと手間をかけて茹で上げた枝豆の方が圧倒的にうま味があります。  
そのことがあって以来、ブロッコリーなど枝豆以外の野菜の調理方法などもポップにしたり、自分で調理した野菜を試食してもらうことを実践しました。「食」へのこだわりを消費者に持ってもらうのには、まず自分自身の「食」へのこだわりを如何にして消費者にアピールするかが重要だと考えたのです。

◆新たな「ニーズ」の創出◆
 私が今やろうとしていることのひとつにトマトの栽培があります。日本人はトマト好きですが、そのほとんどがサラダなどにするために生食です。トマトの品種には加熱用と生食用があり、ヨーロッパなどの海外では炒めたり煮込んだりと加熱することが多いのです。一方日本では桃太郎に代表されるようなピンク系生食品種が一般的で、サラダなどの生食に用いられています。しかし桃太郎は味が薄いのでソースなどには不向きです。私は濃厚でコクのある加熱用トマトの魅力を消費者にアピールすれば、まだこのトマトには市場のニーズは十分あると考えます。そして私はこらからこのトマト栽培をライフワークのひとつとしてオンリーワンの農業を目指していきたいと思います。

◆栽培品目◆
キュウリ・オクラ・カボチャ・ミニトマト・スイカ・トウモロコシ・ゴーヤー・枝豆・サヤインゲン・サヤエンドウ・スナップエンドウ・ナス・ピーマン・大根・コカブ・赤かぶ・キャベツ・レタス・ブロッコリー・カリフラワー・ミニ白菜・長ネギ・ほうれん草・小松菜・のらぼう菜・シイタケ・タラの芽・玉ネギ・菜の花・里芋・サツマイモ・ジャガイモ・フキ・フキノトウ・ブルーベリー・柿・キウイフルーツ・タケノコ(マダケ)・ミョウガ・栗・ルバーブ・ラディッシュ

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