海苔の育苗記①|腕の見せ所は品質を左右する「干出」ばい

10月16日、種付けより3日目。これから一番大事なのが干出と網洗い。
干出とは潮の満ち引きを利用して海苔網を海水から空気中に干す事ばい。どがんして干すと?というところで、いままで投稿してきた竹や吊り綱、そして干満差がここで生きてきます。
まず吊り綱に海苔網を付けてます。例えば吊り綱の長さが2mとします。この吊り綱を高さ4mのところに結びます。そうすれば海苔網は2mより下には下がらんたいね。1mまで潮が減ったら1m海面から上がるし2mまでしか減らん時はずっと海水に浸かりっぱなしたい。
今日の干潮が1.5mです。そしたら網は自然と50cm空気中に干されます。干された時間は3時間弱です。今日は網はきれいに乾いたばい。
 
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この状態が干出ばい!
 
なので吊り綱の結び目を上げ下げし、干出の時間ば見ながら網を乾き具合を調整していきます。これから約2週間(幼芽期という)今年の海苔の味・品質・収量・水揚げを左右すると言っても過言ではなかばい。
 
そして、網洗い作業。
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網洗いは海苔網に付いた汚れや珪藻などを洗い落とすことです。赤ちゃんと一緒で体が汚れたら洗ってやったり拭いてやったりする事だと思ってください。そして元気にすくすく育ってくれる事を願って毎日洗ってます。
海苔養殖に大事なのが干出を利用して海苔網を乾かすことです。なんでか?まず海苔の細胞が健康になってしっかりした海苔が育ちます。干出によりアミノ酸を増やして海苔が美味しくなります。しっかりした海苔になり病気にかかりにくくします。網を乾かす事で付着した珪藻等を死滅させます。乾かせばいい事ばっかりやん、という訳にはいかんところが海苔養殖の難しかとこばい。海苔は他の海藻と違い乾燥に強い生き物です。ばってんあまり乾かし過ぎるとやはり海の生物なので海苔芽も傷んでくるし成長も鈍くなるばい。色も赤っぽくなるし収量もあがらん。干潮の時間は毎日違います。朝早い時間は乾きにくい。午後の時間は気温にも気をつけんば。天気も毎日違います。風が吹く日はすぐ乾くけん油断できん。曇りの日は長~く待たんば乾かん。雨の日は乾かすのはあきらめんば。と、いろんな条件の中で育てていかんばとです。適度な乾き具合を毎日調整していく事が海苔の育苗期の一番重要であり、海苔師の腕のみせどころでもあるとよ。(2015.10.16)◉藤川直樹さんの海苔の育苗記シリーズ

海苔の育苗記②|海苔の赤ちゃんの健康診断「検鏡」ばい
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海苔の育苗記③|いい感じに育っとうね!
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海苔の育苗記④|ただいま葉長3−5mmばい
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Writer

佐賀県佐賀市

藤川直樹

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