福井県小浜市

横山拓也

田烏水産株式会社

小浜よっぱらいサバ(養殖サバ)

【私たちが育てる『小浜よっぱらいサバ』】
 田烏水産株式会社の代表を務める、横山拓也といいます。
 私たちは、福井県小浜市の田烏という漁村で、『小浜よっぱらいサバ』と命名したサバを、京都の酒蔵で醸された吟醸酒の酒粕を餌にして育てています。
 私たちの育てるサバは、青魚独特の臭みがなく、爽やかな香り、深い旨味と鮮やかな甘味を楽しんでいただくことができます。京料理の重鎮からは、「透明感のあるサバ」と評していただきました。
 素材そのまま、お刺身で召し上がっていただきたい、我が子のようなサバたちです。


【サバ養殖との出会い】
 私は、元々小浜の人間ではなく、漁業者でもありませんでした。
 出身は、兵庫県尼崎市。海はありますが、残念ながら味噌汁色です。
 最初の職業はキリスト教会の牧師(これは終身なので今でもそう)、17年を経て、なぜかバイオテクノロジーの世界で起業し、以来、主に酵母の研究に取り組み、今は徳島大学大学院博士後期課程在学中(社会人D)です。
 そういう私が、2016年、「福井県小浜市で酒粕を餌にしてサバを養殖する計画があるので、餌の研究で助言してくれないか」と請われたのをきっかけに、小浜にやってきました。酒粕は、お米から酵母の働きで作られるものなので、私に白羽の矢が当たったというわけです。
 そこで、小浜田烏のどこまでも碧い海と、行われているサバ養殖そのものに一瞬で魅せられ、餌の研究にとどまらず養殖の仕事自体に「見習い」として入門し、大阪から引っ越して、住民票も移して田烏住民となりました。
 田烏のサバ養殖は、元々市役所が主体の官製事業だったのですが、2019年には民業に移行することが決まっていました。しかし、事業を引き受ける漁業者もおらず、また企業もないという状態でした。
 そこで、ずっと養殖の実務を担ってきた田烏の漁業者と共に、新しい会社を興そうということになり、社長を拝命することになったのです。長年研究室の中で仕事をしてきた私が、わずか2年の修行だけで、養殖生産者となってしまったわけです。
 俗にいうIターン組のひとりなのだと思いますが、碧い海で、大先輩方と共に漁業者として働き、美味しいサバを創り出す毎日は、今までにない充実した日々です。


【私たちのこだわり ~美味しさの理由~】
 自分のことより、まずサバについて語らせてください(…既にけっこう自分を語ってますが)。私たちがこだわっていること、美味しくなる理由について、お話しします。

1.海の美しさと豊かさ
 人の手によって作られるイメージが強い養殖魚ですが、実は海によって育まれています。当然、その海のありようが、味を左右します。
 若狭小浜の複雑なリアス式海岸は、人の営みよりもはるかに大きな自然に覆われており、そこから豊かな栄養が流れ込む海面は、どこまでも透明であり、エメラルドグリーンに輝いています。
 古来ワカメ漁やナマコ漁も盛んな田烏では、長い歴史の中、村民総出でその海の美しさを守り続けてきました。
 先人たちに守られてきた海の美しさと豊かさこそが、養殖サバの味から余計なものを取り除き、透明にしているのです。ここは本当に大事なところだと思います。それを、私たちはしっかりと引き継いでいかなければならないと決意しています。

2.サバの「小ささ」
 もうひとつの美味しさの理由、それは「小ささ」です。
 お店に並ぶサバは、平均して500~600ℊくらいの大きさ。しかし、小浜よっぱらいサバは、300~330ℊほど。天然ものだと、ピンサバなどと呼ばれていたサイズです。
 サバは、大きいほうが脂も乗っていて美味しい…と考えられてきました。しかしそれは、水揚げされてから数日以上経ち、強い臭味が出てしまったサバを、火を通して食べる場合のこと。同じ鮮度で、刺身で食べる場合は、大きくなりすぎると旨味や甘味が脂で塗りつぶされてしまいます。その単調な味のため、二切れでもう飽きがきます。
 市場からは、「サバのイメージどおりじゃないと売れないから、大きくしてくれ」と言われ続けてきました。実は、魚体を大きくすることは全く難しくありません。生の魚を餌として与えればよいのです。また、そのほうがコストもかかりません。
 しかし、私たちはそうせず、配合飼料と酒粕だけで、小さく引き締まった魚体を理想にサバを育ててきました。それは、見栄えよりも味を優先させるため、あくまでも深い旨味と鮮やかな甘味を楽しんでいただくためなのです。
 もうひとつ、生の魚を餌として与えると海がどんどん汚れてしまうのも、そうしないことの理由です。 

3.酒粕
 三つめの理由は、その名の由来でもある酒粕。
 主に、京都市出町柳の江戸時代から続く松井酒造さんから、純米吟醸酒の酒粕をご提供いただいています。
 ペースト状の酒粕を、配合飼料に重量比で5%加え、飼料表面に空いた数百μmの無数の小さな穴に沁み込ませ、サバに与えます。
 酒粕入りの餌という発想は、小浜と京都が鯖街道で結ばれていた古事から、京都の酒蔵で醸された日本酒の酒粕で小浜のサバを育てたら面白いという想いから出たものでした。
 ところが、私と福井県立大学の先生とで行った酒粕入りの餌試作品をサバに与える実験で、身から香気成分のリモネンが検出され、さらにサバの血中コレステロールの値が上昇することがわかりました。魚の場合、それは健康であることの証です。
 味にも魚体の健康にも素晴らしい効果ありとわかり、混合の配分、製造方法などの研究を進め、現在もさらなる向上を目指しつつサバに与えています。

 以上の3つが、小浜よっぱらいサバの美味しさの理由です。
 私たちは、サバと共に自然にはぐくまれているという事実を自覚しつつ、皆さんに唯一無二の美味しさを味わっていただくため、養殖に取り組んでいます。

※美味しさの理由:おまけ
 サバは、周知のとおり傷みやすい魚です。また、温度管理がとても繊細です。ですので、水揚げしたその日か翌日中に飲食店に届けする場合は鮮魚でよいのですが、一般のご家庭にてお刺身で召し上がっていただく際には、冷凍が必須になります。
 しかし、普通の冷凍方法では、解凍後にお刺身にするにはちょっと厳しい。そこで、私たちはアルコールブライン凍結という新しい急速凍結手法を採用(小浜市ではCASと3Dフリーザーも使えますが、アルコールブラインが突出して優れているので)し、解凍後に鮮魚と遜色のない味を実現しています。


【私たちの志と活動】
 私たち田烏水産株式会社、そして小浜よっぱらいサバは、若狭小浜の大自然、そして小浜市、田烏のたくさんの人々の想いによって生まれ、そして支えられています。
 市場の人、仲買さん、市役所の人、大学の先生、学生、そんな皆さんが、時々養殖現場に来て船に乗り、さらに作業も手伝ってくれる…小浜ではそれが当たり前なのですが、どうも他ではそうそうないことだと、最近知りました。小浜スゲー❕(すみません、郷土愛丸出しで…)
 今、コロナ禍の中、ともすれば社会に責め合いと分断が生まれがちな気がします。しかし、小浜では、異なる所属、立場の人々が助け合って生きている。その素敵な想いをさらに強く結び、力を集め、美味しいもの、良いものを日本中の方々にお届けしていきたいと思います。

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